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2009/01/19


世界でもユニークな日本の高級市場の今後は?

J@pan Inc

「世界で唯一のマス高級市場」と揶揄される、ブランド商品に強い嗜好を持つ日本市場は、これまで世界の高級品業界において最前線の重要市場であり続けてきた。その日本市場も、ここのところ陰りが見られる。市場が成熟しているこの日本の高級市場では一体何が起こっているのであろうか?

世界で唯一のマス高級市場

東京では、若い女性の10人中9人が、何らかのルイヴィトン(Louis Vuitton)商品を持っているとよく言われている。統計そのものは信憑性は定かではないが、日本の都市部で有名高級ブランドを所有している人の割合は、ニューヨーク、シドニー、パリのような世界の大都市に比べても非常に大きい。

欧米からすれば、日本人の輸入高級品へ強い嗜好は、高級ブランドにとって必須である「排他性」に対する大きな脅威である。以前は手が届かないと思われていた高級ブランドを人口の多くが手にした時、これらは高級ではなくなり、皆が当然身に着けるべきものになるのだろう。日本市場は欧米とは異なり、「世界唯一のマス高級市場である」とも考えられている。

また、日本女性は、ヨーロッパ女性よりも「美しいと思えるものを持ちたいという心理的要求」が強いとも言われている。イタリアの若者が、もし高級品を購入すれば、彼らは「道徳規範を破っている」と感じる傾向にあるそうだ。

ヨーロッパ社会では、高級なものに大きな注意を払うという価値基準は、不思議に感じられる。しかし、日本の社会的背景を広く見れば、それも理解できる。日本人特有の高級品への強い嗜好は、文化的・社会的同質性、比較的大きな中流層、高い人口密度という3つの特性に起因しており、これらが家以外への消費を促進し、見た目に重きを置く人間味のない社会を作り出している。ヨーロッパでは自慢することは軽蔑の対象となるが、日本には身分が高くてもひけらかさずに、粗末な服装を着るという習慣はない ― 皆、社会的地位にあった服装をすることになっている。

市場の低迷

しかし現実は、ここ数年、市場は苦しい状況にある。日本では、給料やボーナスの伸びは横ばいで、非正規雇用社員の割合が増え、近頃では、不安を煽る経済ニュースが続き、多くの日本人は自分たちが裕福であるとは感じていない。これに加え、国民の平均年齢が年々上がり労働力は縮小し、高級品にこれまでお金をもっとも投資してきた20代や30代の購買者層も今後縮小していくことが考えられる。

また、消費者は、消費の対象をより安価なものに移行している。かつてのOL達は、デザイナーブラウスにとんでもないお金を払うことにも気にしなかったが、今では、このような実用的商品はザラ (Zara)のようなチェーン店で買う傾向が強い ― この傾向は、日本に進出してきているスウェーデンの小売企業、H&Mに良いニュースだろう。

準高級市場が被害を受ける

一方、これは高級業界の中で、準高級市場をターゲットにしてきたブランドにとっては悪い傾向だ。ここ数年、コーチ(Coach)やトッズ(Tod's)、ホーガン(Hogan)など、手の届きやすい高級を売りにして、いわゆる高級ブランドよりも断然安い革製品を売ることで、売上を上げてきた。しかし、消費者がより低価格の代替品を選ぶようになり、各企業は厳しい状況に立たされている。このような変化は、高級ブランドでは起こっていない。最近の調査によれば、ボッテガ・ヴィネタ(Bottega Veneta)やマークジェイコブズ(Marc Jacobs)などのモダンな「注目の」ブランドは、相変わらず良い立ち位置にいるようだ。一方、コーチやティファニー(Tiffany)のような、準高級市場で成功を収めてきたブランドは、より厳しい環境に直面している。

また、日本の消費者は値上げに敏感になっており、以前は、高価であることは良いこと見られていた。多くの若い女性は、「必須」ブランドを買うために貯金をしているが、消費の対象は少しずつ変わりつつある ― 財布やクラッチなどそれほど高価でない商品に向かっている。専門家によれば、2000年あたりから、日本の消費者心理の中で、高級品のポジショニングに変化が起きたと言われている。20代や30代の日本人女性が自分自身への理解を深めたことが主な原因であり、より自立的にブランドを選ぶように消費行動の変化が見られる。そのため、高級製品の中でも、既製品がもっとも影響を受けたカテゴリーであると言われている。

成熟市場

かつて高級ブランドは、素朴な田舎出身者を、新たな都会のメンバーとして認める証として買い求められた。都市化の黎明期にある中国でブランド品が爆発的な広がりを見せているのと比べると、日本は明らかにそこからは進歩を遂げた。この点において、日本市場は、ヨーロッパ諸国のような成熟したブランド消費市場に似通ってきているということができる。

日本市場は成熟ブランド消費市場に似通ってきている

それでは、日本の高級ビジネスの将来はどのようになるのだろう?「2008年、2009年と高級需要は、持続的に減速しするだろうとの予測が無難である。しかし市場はまだ健全であり成長を続ける業界であることを忘れてはいけない。スランプにも関わらず、アナリストは、今後数年での成長を6%と予測しており、この業界はこれまで常に市場規模を拡大させてきた。」というのが、専門家の見解だ。

また、日本の景気は不透明であるものの、消費者は過敏に反応するが、高級ブランドにはまだチャンスがあるとも見られている。「正しいポジショニングを維持し、消費者とうまくコミュニケーションをしていくことができれば、日本はいまだ裕福な国である。浪費と倹約の期間のサイクルが、日本市場には顕著に現れている。」という意見もある。

さらに、異なる意見として、市場はそのうち回復を見せるだろうが、過去ほど早くはないという意見もある。「日本の市場には、洗練された消費傾向があり、競争を勝ち抜くためには、マーケティングの意思決定と企業戦略を、洗練されたものにしていかなければならない。」と考えられている。「ブランドの平均価格をどう保つかが、これからの高級業界にとっては、非常に重要なトピックである」とのことだ。

近い将来、日本でビジネスを続けるヨーロッパの高級ブランドは、さまざまな嗜好を持ったより広い顧客を相手にすることになり、その分数多くの競合と競争をしていかなければならない。洗練された日本市場の新たに参入を考えている企業は、脅威を背にできるだけ多くの機会を作っていく事が必要であり、微妙な消費者のニーズにうまく合わせていけるブランドにとっては、大きな見返りがまっているだろう。

(J@pan Inc "The Decline of Luxury Brands in Japan?" 2008/8/31 より)


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